プラネタリーヘルス
落ち葉を殖やすということ
2025.12.15
都市部では毎年秋になると、大量の落ち葉が「ゴミ」として回収される。ブロワーで吹き飛ばし、袋に詰め、焼却場に運ぶ。この行為が、どれほどの生態系サービスを破壊しているか、ほとんどの人は気づいていない。
落葉は、森の床に積もることで土壌微生物の餌となり、分解の過程で腐植を形成する。腐植は水を保持し、ミネラルをキレートし、菌根菌のネットワークを育む。1枚の落ち葉が土壌に還るまでに関与する微生物の種数は数千に及ぶ。これは一つの生態系全体を駆動するエネルギー源なのだ。
プラネタリーヘルスの観点から見ると、落ち葉の扱いはその社会の自然観を映す鏡である。落ち葉を邪魔者として排除する社会は、微生物を敵と見なし、抗菌・殺菌に偏る医療を生む。逆に、落ち葉を資源として循環させる社会は、共生の知恵を持ち、多様な微生物との共存を前提とした健康観を育てる。
千早赤阪村の活動では、周辺の落葉広葉樹の葉を集めて堆肥化し、畑に還すサイクルを実践している。この単純な行為が、土壌の保水力を上げ、作物の栄養価を高め、それを食べる人間の腸内環境を改善する。落ち葉を殖やすこと──それは地球規模の健康を、足元の1平方メートルから始めるということだ。