栄養医学

認知症予防と栄養戦略

2025.12.01

認知症予防と栄養戦略

認知症は「脳の糖尿病」と呼ばれることがある。アルツハイマー型認知症の脳では、グルコースの取り込みが著しく低下しており、これは発症の20年以上前から始まっている。つまり、認知症の予防は40代から始めなければ遅い。

オーソモレキュラー医学の観点から、認知症予防に不可欠な栄養素を挙げると、まずビタミンB群──特にB1、B6、B12と葉酸──がある。これらはホモシステインの代謝に関与し、不足すると血中ホモシステインが上昇して脳血管障害のリスクを高める。次にビタミンD。脳内のビタミンD受容体は海馬に高密度で発現しており、記憶形成と直結している。

脂肪酸のバランスも決定的に重要だ。脳の乾燥重量の60%は脂質であり、その中でもDHAは神経膜の流動性を保つ鍵となる。しかし現代の食事ではオメガ6系脂肪酸が過剰になりやすく、慢性的な炎症の火種となっている。オメガ3/6の比率を1:2〜1:4に保つことが、脳の炎症制御において最も基本的な戦略となる。

ただし、サプリメントだけでこれを達成しようとするのは片手落ちだ。栄養素の吸収は腸内環境に依存し、腸内環境は食物繊維の質に依存し、食物繊維の質は土壌の健全性に依存する。栄養医学を突き詰めると、結局は土に行き着く。認知症予防の最前線は、実は畑にあるのだ。